慢性閉塞性肺疾患とは
慢性閉塞性肺疾患では、太い気道（気管支）と顕微鏡でなければ見ることができない細い気道（絹気管支）、その先端にある肺胞に病変があります。
気管支の病変が慢性気管支炎と呼ばれ、肺胞の病変が肺気腫と呼ばれていますが、慢性気管支炎と肺気腫は別の病気ではなく、両方が同時に存在しています。
このため、欧米では、慢性気管支炎と肺気腫をあわせ、慢性閉塞性肺疾患という病名を使っています。現在、日本で使われている病名の現状に合わせて慢性気管支炎と肺気腫の両方が登場しますが、実際には、この二つを区別することは困難で、その治療にも大きなちがいはありません。
慢性閉塞性肺疾患の原因と症状
慢性閉塞性肺疾患の原因は、長期間の喫煙です。20〜30年以上にわたって、たくさんたばこを吸っていた人のおよそ10〜15％が慢性閉塞性肺疾患になります。
肺機能は年齢とともに衰えるため、とくに高齢者が問題です。北米では慢性閉塞性肺疾患は死亡原因の第四位、寝たきりの原因の第二位を占める重要な病気で、日本でも喫煙率の増加と高齢化社会の到来によって、今後、患者数が増えると予想されています。
もっとも多い慢性閉塞性肺疾患の症状は、からだを動かした後の息切れで、労作時呼吸困難といいます。これは長期間にゆっくりと進行し、このため日常生活の活動が制限されていることがしばしばあります。
せきやたん、また気管支ぜんそくによくみられる喘鳴や呼吸困難で息苦しくなる発作がみられることもあります。
慢性閉塞性肺疾患の検査と診断
慢性閉塞性肺疾患に特徴的な胸部Ｘ線所見はないといってよく、診断するときに、ばかの病気ではないことを確かめるため撮影されます。
慢性閉塞性肺疾患の診断には、スパイログラフィーと呼ばれる簡単な検査が必要です。これは、どれくらいの量の息をどれくらいの速さではき出したかを調べる検査です。最大量の呼吸をしたとき、はき出される空気の量を肺活量と呼びますが、ふつう慢性閉塞性肺疾患では肺活量は悪くなりません。
慢性閉塞性肺疾患の治療
安定した状態なら、慢性閉塞性肺疾患の治療は、禁煙、薬物治療、リハビリテｊンョンの三つになります。喫煙を続けると、さらに肺機能が低下するので、まず禁煙を実行します。
すでに慢性閉塞性肺疾患という病気になっていても、禁煙した場合と喫煙を続けた場合では、長生きできる年数がちがいます。
ただし、禁煙で必ずしも症状が改善するわけではありません。 慢性閉塞性肺疾患の治療薬は、気管支拡張薬とステロイド薬（副腎皮質ホルモン薬）に分類できます。
気管支拡張薬は抗コリン薬とＢ2刺激薬の二種類で、ともに吸入薬です。内服薬と比べると、たいへん少ない量の薬剤でも、直接に気管支に到達して効果を発揮するため、吸入薬がまず最初に使用されるべきです。